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“データ”が創る社会とキャリアを知る一日

―― Data Science Fes 2019 Student Academyから(学生レポート)

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<学生プレゼン大会①>
10代後半~20代女性への緑茶ホット・ペットボトル販売数を伸ばしたい!

横山ゼミ・マーケティング学科M組女子(青山学院大学経営学部)
From 青山学院大学経営学部POSデータ解析コンペティション2019

横山ゼミ・マーケティング学科M組女子(青山学院大学経営学部)

 トップバッターは、青山学院大経営学部で実施された「POSデータ解析コンペティション2019」で最優秀賞に輝いたチーム。コンビニエンスストアなどでペットボトル入りホット飲料の種類や売り上げが増えている背景を踏まえて、緑茶のペットボトルを10代後半~20代の女性へ訴求施策を提案するというプレゼンでした。ホット飲料は男性よりも女性が購入しているという仮説1と、女性のなかでも30代以上が購入しているという仮説2の二つをデータの上から検証。提供された実際のPOSデータから仮説1は裏付けられ、仮設2についてはホット飲料全体の購入率は高いものの、該当商品に限っては若い世代の購入割合が低いことが判明した。そこでSNSと連動したイベントや若い世代に刺さるCMの制作、コンビニでのプロモーション、JK川柳の実施など、具体的な施策を提案したことなどが高い評価を得たことが紹介されました。

<チームメンバー>
水野麻衣さん(青山学院大学経営学部マーケティング学科3年)
漆山朝香さん(青山学院大学経営学部マーケティング学科3年)
荒谷優花さん(青山学院大学経営学部マーケティング学科3年)
上野恵佳さん(青山学院大学経営学部マーケティング学科3年)
(以上,写真左から)
緒方詩乃さん(青山学院大学経営学部マーケティング学科3年)
(当日都合が悪く欠席)

記念写真

<学生プレゼン大会②>
2019年7月に実施された参院選の結果をデータ分析で予測して高い的中率を実現!

おいしいカレー
From 第1回早稲田大学データサイエンスコンペティション

おいしいカレー

 2校目は「第1回早稲田大学データサイエンスコンペティション」でData Science Fes賞を獲得したチーム。このコンペティションは、先の参議院選挙の議席を予想してその結果精度を競う内容で実施されました。このチームは全124議席中、113議席を的中させての受賞。選挙区では、政治家の3バンといわれる「地盤」、「看板」、「カバン」に加えて新聞記事などを参照して選挙序盤と終盤の情勢をデータとして加えて分析したとのこと。地盤は当選回数やツイッターのフォロー/フォロワー数、看板はグーグルでの検索数、カバンは選挙運動に使った費用をデータと利用しています。一方、比例区では政党ごとに過去の世論調査などから支持率や個人票/政党名票の割合を分析して「個の力の強さ・弱さ」、「支持層・無党派層の強さ」でパターン化。リアルタイムだけでなく過去のデータも収集・分析したことで高い的中率を実現できたと振り返っていました。

<チームメンバー(左から)>
吉田有壽木さん(早稲田大学教育学部数学科学部4年)
山田健太さん(早稲田大学基幹研情報理工・情報通信専攻)
横山源太朗さん(早稲田大学先進理工学部電気・情報生命工学科4年)
藤井稚菜さん(早稲田大学基幹理工学部表現工学科学部4年)

記念写真

<学生プレゼン大会③>
和歌山県のコンペティションで、フレッシュなフルーツでの地域活性化を提案!

世直し
From 第2回和歌山県データ利活用コンペティション(立教大学チーム)

世直し

 3校目は、「第2回和歌山県データ利活用コンペティション」で大賞を受賞した立教大学チーム。コンペティションでは、和歌山県で若年層に雇用を創出して魅力的な地域づくりに結びつく施策提案が求められたそうです。この課題に対してチームは、「農業の6次産業化」と「高品質フルーツ」で稼げる農業の実現を提案。それを裏付けるために同県で農業に従事している人の割合などのパブリックデータを収集・分析して、フルーツを活用した施策が和歌山県の地域活性化に役立つかを検証したといいます。その結果から、育てるフルーツをブランドとして位置付けるとともに、3年間の6次産業研修を実施して若い世代へアピールしていく施策へと結びつけました。価値の高いブランドになりうるフルーツをつくるノウハウを、時間をかけて提供していく仕組み、若い世代がしっかり稼いで暮らせる環境づくりなど具体的で実現しやすい提案内容は納得感がありました。

<チームメンバー(左から)>
加藤光さん(立教大学経営学部経営学科4年)
稲森暖乃さん(立教大学経営学部経営学科4年)
森西美光さん(立教大学大学院経営学研究科経営学専攻修士1年)

記念写真

<学生プレゼン大会④>
主婦にとって、ムリなく能力を発揮してニーズにこたえる環境づくりを提案!

デーサイ主婦スリー
From WiDS TOKYO @ Yokohama City University

デーサイ主婦スリー

 デーサイ主婦スリーは、WiDS TOKYO@Yokohama City Universityの学生の部で最優秀賞を獲得したチーム。主婦が直面している課題解決と共に、新しい働き方を提案するユニークな内容でした。非正規雇用で働いていることが多い現状とそのニーズを踏まえて、女性も男性ともに正規雇用で働いているケースが多いオランダをモデルに設定。子育てを始めるタイミングで、地方都市で生活しながらデータサイエンティストに必要な知識とスキルを身につけられる環境の整備を提案しました。さらに、データを活用した『HR tech』とキャリアの長期的・短期的な見通しを組み合わせた新しい働き方を実現するスキームを提案。企業と個人とが、互いのニーズとタイミングにマッチした環境作りをともに目指すことで時間、場所、内容に捉われない働き方を見出していく将来像を示していました。ITの活用で、ニーズの把握と施策の提案の双方を実現した姿勢は高く評価できました。

<チームメンバー(左から)>
山根千乃さん(横浜市立大学データサイエンス学部2年)
吉水優里子さん(横浜市立大学データサイエンス学部2年)
上矢莉子さん(横浜市立大学データサイエンス学部2年)

記念写真

<学生プレゼン大会⑤>
綿密な分析を経て乳酸菌製品の売上向上施策を立案

河本ゼミ乳酸菌トリオ
From 滋賀大学データサイエンス学部データサイエンス学科

河本ゼミ乳酸菌トリオ

 河本ゼミ乳酸菌トリオは、乳酸菌製品を売上増へと導く実践的な施策にトライしました。まず、インテージのSCI(全国消費者パネル調査)とSRI(全国小売店パネル調査)、アンケート調査のデータをもとに、対象商品のブランドイメージや競合商品についてコレスポンデンス分析などを実施。対象商品は「カロリーが低い」「健康にいい」といったイメージを持たれているものの、売上高では競合商品に及ばない事実を明らかにしました。次いで、シェア奪回の課題を検討。両商品を購入した層に比べて対象商品のみの購入層は商品の認知度が低いことを突き止めました。そこで、対象商品の認知度が低く、しかも「健康にいい」イメージを持っていなかった50代、60代の女性をターゲット層に設定。健康食品を扱うテレビ通販番組の中で、「健康にいい」イメージを訴求する施策を提案しました。依頼企業や広告代理店から有効性を評価され、「データサイエンティストとしての手応えを得ることできた」と語っていました。

<チームメンバー(左から)>
森口翼さん(滋賀大学データサイエンス学部データサイエンス学科3年)
河地卓哉さん(滋賀大学データサイエンス学部データサイエンス学科3年)
井本望夢さん(滋賀大学データサイエンス学部データサイエンス学科3年)

記念写真

<学生プレゼン大会⑥>
POSデータに基づくシミュレーションで学生食堂の混雑緩和に成功

アレンジャーズ
From 中央大学2019年データ分析フェスティバル

アレンジャーズ

 アレンジャーズは、「3号館食堂の混雑シミュレーション」と題して講演しました。同学の3号館食堂は、昼食時や試験期間中などに想定以上の来場者が集中し、レジや受け取り口に長い列ができるといいます。このため、POSデータを活用して正確な食堂混雑状況を把握。ポアソン回帰分析で来客人数の予側モデルをつくり、混雑緩和を目指しました。
 分析の結果、品目別の来客人数は天候の影響を受けないものの、試験期間中は食事時間に余裕があるため品目別の来客人数に変化が生じるなど学生のリアルタイムの動きが判明。品目別の来客人数とレジと受け取り口の平均処理時間を利用して、混雑時の学生の動きをシミュレーションモデルとしてまとめました。これにより、正確な来客予測が可能になりました。さらには、レジを増やした場合の効果など施設変更の効果も予測可能だそうです。データの的確な掘り起こしと正確な分析によって、埋もれがちな問題を可視化し克服した貴重な実例といえそうです。

<チームメンバー(左から)>
德永備久さん(中央大学大学院理工学研究科経営システム工学専攻ソフトコンピューティング・統計科学研究室 修士2年)
伊藤惇さん(中央大学理工学部情報工学科知能・情報制御研究室 学部4年)
須賀原颯紀さん(中央大学大学院理工学研究科経営システム工学専攻 応用最適化研究室 修士1年)

記念写真

<学生プレゼン大会⑦>
複数回接触に着目したCM配置―視聴フローに基づく数理最適化モデル―

TRIp
From 経営科学系研究部会連合協議会データ解析コンペティション(慶応義塾大学チーム)

TRIp

 TRIpは、テレビの接触ログを活用し、ビジネスに直結するCM配置の数理最適化モデルを提案してくれました。CM配置にはさまざまな先行研究が存在します。例えば、延べ視聴者数が最大になるようなCM配置を考える数理最適化モデルなどです。一方で、「広告が効果を発揮するには3回以上の接触が必要」とする「スリーヒッツセオリー」と呼ばれる理論が提唱されており、実務家の間で広く受け入れられているようです。この理論に従えば、「各ユーザが何回CMを見たか」に着目し、その回数に応じてCM効果が変化する(例えば、3回CMを見ると効果が大幅に上昇する)と考え、CMの配置を検討する必要があります。実はこの問題は、都市工学分野における「フロー捕捉型配置問題」との共通点があり,これを拡張することでCM配置に応用できます。フロー捕捉型配置問題は、道路ネットワーク上の人の移動に着目し、施設配置を考える数理最適化問題のひとつです。同学は、元の問題における「人の移動」を視聴行動の流れ、「施設」をCMと捉えることで新しい数理最適化モデルを提案しました。今回は例として、結婚情報雑誌のCMを対象にデータを集計し、モデルを適用。その結果、スリーヒッツセオリーに従えば、ほとんどの場合において現行よりも効果的な配置が得られたといいます。

<チームメンバー(左から)>
濱田賢吾さん(慶應義塾大学大学院 開放環境科学専攻 修士課程2年)
小貝洸希さん(慶應義塾大学大学院 開放環境科学専攻 修士課程2年)
八尾優作さん(慶應義塾大学大学院 開放環境科学専攻 修士課程2年)
丹野一輝さん(慶應義塾大学大学院 開放環境科学専攻 修士課程1年)

記念写真

<学生プレゼン大会⑧>
チャート画像を用いた株価の予測で50%超の正確性達成

Team SDQ
From POL Fintech Data Championship

Team SDQ

 Team SDQは機械学習・AIを活用した株ポートフォリオによる運用について発表。さまざまなデータを駆使して、1カ月後に最も上昇する5から10の銘柄を提示した。方法としてはファンダメンタルから機械学習モデルへ移行する手法と、機械学習モデルからファンダメンタルへと移す手法を併用。作成したモデルは57.8%の正確さを達成。結果、「定量審査」としてシミュレーション運用で16%プラスを収益を生んだ。さらに「定性審査」で運用アイデアの新しさと発展性が評価さ れコンペで最優秀を受賞したという。

<チームメンバー(左から)>
井ノ上雄一さん(京都大学薬学研究科医薬創成情報科学専攻 博士課程1回)

記念写真

<総括>
学生プレゼン大会を見て

 今回の学生プレゼン大会を見て、私は社会課題解決に向けたデータサイエンスが果たす役割の重要性を改めて認識することができた。特に印象的だったのは、政治×データサイエンスやマーケティング×データサイエンスなど、既存の分野とデータサイエンスの融合により、今までにない価値が生み出されようとしている点だった。

 データサイエンスと言うと、専門的で社会から独立したイメージを持たれることが多い。しかし、実際はデータサイエンスの技術は、ただそれ自体が他分野から独立して存在しているだけでは意味をなさない。データサイエンスが社会に貢献するためには、常に社会との関係の中であらゆる分野のデータと結びつく必要がある。

 また同時に今後における重要性を認識したのが、データ分析に基づいた課題解決手法だ。どの分野も従来では、人間の勘と経験をベースにしたアプローチが主流だったのは事実。しかし、データサイエンスを生かした現状分析を実施することで、今までは気がつかなかったような理想と現実のギャップや消費者行動の傾向を把握でき、課題設定を明確に行うことが可能になる。そして、明確化した課題に対する的確なアプローチを実施できれば、今まで以上に費用や効果の面で効率的な施策を実施することが可能になるのではないだろうか。

 今回の学生プレゼン大会を通じて、私はデータサイエンスの今後の活躍に期待を持つことができた。どのチームもプレゼンの質はハイレベルだったが、順位は1位Team SDQ、2位アレンジャーズ、3位TRIpだった。他のチームにも賞賛を贈りたい。

 (リポート:慶應大学商学部 岡部 凌生)

Information

イベント名
Data Science Fes 2019
主催
日本経済新聞社
期間
2019930日(月)~20191129日(金)
お問い合わせ
dsfes@nex.nikkei.co.jp