変化の先へ~データサイエンスはビジネスサイエンスへ~
日本のデータ社会の現状、課題、解決策を考察

―― Data Science Fes 2019 オープニングフォーラムからVol.1~プレセッション~

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 9月30日、東京・千代田区の一橋講堂で「Data Science Fes 2019 オープニングフォーラム」が開催された。日本経済新聞社が主催するData Science Fes 2019は、「データで社会を変える=データサイエンス」を起点に、産・官・学の変革に意欲的なステークホルダーが一堂に集まり、日本全体でデータ・ドリブンを加速させるために共に考え、共創してゆくプロジェクト。オープニングフォーラムでは、参画パートナーたちがそれぞれの視点から、テーマ別に日本のデータ社会の現状、課題、解決策などを語り合った。

<プレセッション>
スタートアップ×学生セッション
「AI・データ時代をどう生きるか?」

株式会社日本データサイエンス研究所 CDSO(Chief Data Science Officer)大杉慎平氏
ストックマーク株式会社 代表取締役CEO 林達氏
コーディネーター:株式会社zero to one 代表取締役CEO 竹川隆司氏

 プレセッションでは「スタートアップ×学生セッション AI・データ時代をどう生きるか?」をテーマに、日本データサイエンス研究所 CDSOの大杉慎平氏、ストックマーク代表取締役CEO林達氏、コーディネーター役としてzero to one 代表取締役CEO 竹川隆司氏が登壇。学生を交えてのディスカッションが展開された。

先端IT人材の不足と産学の人材アンマッチは、世界共通の課題

 冒頭、竹川氏は世界共通の課題を二つ提示した。一つが、先端IT人材の不足だ。
「経産省は、2020年には4万8,000人の先端IT人材が足りなくなると予想しています。米国の民間プログラミング教育機関の資料を見ると、米国でも100万人、ヨーロッパでも75万人の人材が足りなくなるというデータが紹介されています。先端IT人材の不足は、今や世界共通の課題といえます」(竹川氏)
 もう一つの課題が、産学の人材アンマッチだと指摘する。
 「米国の事例で、産学界それぞれに『大学の新卒者は使えますか?』と質問したところ、"Yes"と答えたのは大学の学長が98%、企業の社長は11%でした。この人材アンマッチは米国だけの問題ではありません」(竹川氏)

 次に大杉氏が、AI活用による労働生産性の向上を強調。今後、拡大していく領域として物流と介護福祉の業界を挙げた。
 「物流業界は『物流クライシス』といって苦しんでいます。その理由の一つが不在配送問題です。私たちは2024年に全国で設置が完了する次世代電力計『スマートメーター』を使って、AIが電力データから在宅先を割り出し、受け取りやすい時間帯に回れる配送ルートを配達者の方々に示します。これにより不在配送が91%も減少します。一方、介護福祉の分野においても、老衰の早期測定などに『スマートメーター』とAIを活用していきます」(大杉氏)

 続いて、林氏がストックマークの事業概要を説明した。
 「ストックマークは、東大発のスタートアップです。AI×テキストマイニングを強みとし、SaaSと呼ばれるクラウドサービスを提供しています。実は、これまで人間が解析できていたデータは、売上や会計など構造化された数値データでした。ところがビジネスを実践していく中で使われるのは、ほとんどが企画書や商談メモなどテキストの非構造化データです。20%の構造化データに対し、80%の非構造化データは解析できていませんでした。それを解析しないことには正しい意思決定ができないといえます」(林氏)

AIは人間の生活や仕事をサポートする存在に

 その後、学生も交えてのパネルディスカッションが行われた。ポイントは、時代の捉え方、求められる人材像、学生・若手社員へのアドバイスの3点であった。
 まず最初に、学生から「AIと人間の関係がどのように変化していくのか」という質問に対し、登壇者が答えた。
 「大きなイノベーションが生まれるときには、大きなハレーションが起きると思います。ただ、何も恐れる必要はありません。かつて機械が導入され始めたときにもハレーションが起きましたが、機械は人間の生活や仕事をサポートする存在になりました。AIもそういう存在になることを我々は目指していますし、社会としてもその方向に推進していくことでしょう」(林氏)
 「人間がやりたくないこと、やってほしくないことをやってもらうという考え方で活用していくのが良いと思っています。介護の例でいえば、お年寄りは自分の孫や子どもにお風呂に入れてほしくない。その役割をAIロボットが代替してくれるわけです」(大杉氏)

ビジョン、変化を恐れないメンタリティ、愛嬌が大切

 次に「求められる人材像」に話が及び、スタートアップで採用する立場を踏まえてニーズを明かした。
 「『掛け合わせ』というものがこの業界で必要になってくることが大前提としてあります。データサイエンスもしくはAIと、例えば医療、教育、製造業など何らかの事業領域で卓越したもの。この掛け合わせを持った人材です。また、より根本の考え方として、例えば当社は"UPGRADE JAPAN"というミッションを掲げていますが、それをやるからには、構成員は当然"UPGRADE YOURSELF"ができていなければならない。技術や社会構造の変化に伴い、自分自身を改変し、必要なスキルセットを獲得していく行動が私自身にも全社員にも課されています」(大杉氏)
 一方、林氏はこう指摘した。
 「ビジョン、変化を恐れないメンタリティ、愛嬌の3つを持つことです。ビジョンに関してで、1つ1つの物事に対して自分なりの答えを出すことが大切です。変化を恐れないメンタリティでいえば、我々の生活はかなりルーチン化されて規範に乗っ取られていると思うので、その殻を破ってボーダーを超えていくことです。三つ目の愛嬌が一番大事です。これはコミュニケーション力であり、対人間力を意味します」(林氏)

隣の人を笑顔にすることがすべてのスタートライン

 学生から「AI による変革を待つ側ではなくて自分から起こしていく側にいるために何が必要か」といったアドバイスを求める声も上がった。
 それに対し大杉氏は「当社にはスタンフォード大学など海外から学生がインターンに来ます。なぜなら、ビジネスサイドのことが分からないといけないからです。若手には吸収力があり特にこの分野ではアドバンテージがあるので、とにかく現場に出てください」と語った。
 林氏は「自分で一つひとつを解釈していくこと。キャパシティを広げていくこと。そして、目の前の人を幸せにすること。その3点を日々意識して生活してほしい」と呼びかけた。
 竹川氏も、ビジネススクールに在籍した頃に教授が良く指摘していたという「隣の人を笑顔にすることがリーダーシップの始まりとなる」という言葉でセッションを締めくくった。


Data Science Fes 2019 オープニングフォーラムからVol.2~オープニングセッション、企業プレゼンテーション①、企業プレゼンテーション②~
Data Science Fes 2019 オープニングフォーラムからVol.3~企業プレゼンテーション③、企業プレゼンテーション④、テーマプレゼンテーション①、テーマプレゼンテーション②~

Information

イベント名
Data Science Fes 2019
主催
日本経済新聞社
期間
2019930日(月)~20191129日(金)
お問い合わせ
dsfes@nex.nikkei.co.jp