Data Society Fes 2020「Student Academy」
データ・AI活用の社会課題解決・ビジネスイノベーションに触れる機会を

目次

データや人工知能(AI)の活用を担うAI人材が不足するなか、同分野への就業を目指す学生が急増している。日本経済新聞社は「Data Society Fes 2020」の第3弾として「Student Academy(共催:POL)」を開催。同業界の第一線で活躍するデータサイエンティストや企業経営者が集結し、データサイエンスやAIの世界の実際とその面白さ、さらには求められる人材像、働くために必要なスキルなどを熱く語りあった。

多様な人材が活躍できる世界

オープニングセッションでは、学生起業家であり、理系学生の就職支援や、大学の研究室と企業とのマッチングサービスを行うPOLの加茂倫明氏と、パナソニック・コネクティッドソリューションズ社の大坪紹二氏が登壇。AIデータサイエンスの世界の現状、またそこで求められる人材像を、加茂氏が大坪氏に問う形で話が進んだ。

大坪氏は、あらゆるものがネットにつながるIoT時代、重要なのがCPS(サイバーフィジカルシステム)との見解を提示。CPSとは「フィジカル(実)空間でデータを収集し、サイバー空間にそれを再現。サイバー空間にAI等を働かせて得られた知見を、フィジカル空間にフィードバックすることで、価値を創出するもの」と解説した。大坪氏はこうしたシステム開発に必要な能力を持つ人材を〒(郵便記号)型人材と名付ける。1つの専門領域を深く極めた人材をI型人材、加えて周辺領域の知識を横に広げた人材をT型人材と呼ぶのに対し、〒型人材とはさらにそこから一歩先の未来を見据えて研究できる人材の意だ。

続くデータサイエンス&ダイバーシティセッションでは、NTTデータ数理システムの小木しのぶ氏、Rejouiの菅由紀子氏、横浜市立大学の小野陽子氏が登壇。小木氏は「データサイエンスの世界には様々なプレーヤーが必要であり、多様性が重要」と訴え、性別や人種、国籍などを意識せず進めていくのが理想と話した。菅氏はこれに同意し、「多様性ある集団でデータに相対しなければ、バイアスがかかり、知りたい事象にたどり着けない事態も起こりえる」と指摘。菅氏は「データサイエンティストのスキルは一生使える。起業のための初期投資も少なく、ワークライフバランスもとりやすい」と語り、女性にお勧めの職業とした。最後に「多彩な人がこの分野で活躍してほしい」と3人の意見が一致した。

データ駆動型戦略が不可欠に

データサイエンティスト協会セッションには、様々な業界から多彩なデータサイエンティストたちが集結。コーディネーターの電通(当時)佐伯諭氏の進行のもと、電通デジタルの有益伸一氏、JMDCの北野道春氏、Mobility Technologiesの佐野遼太郎氏、野村総合研究所の原野朱加氏の4人のパネリストが、それぞれの来歴を語り、データサイエンティストとして必要な素養、スキルなどを語った。

有益氏はデザイナー出身で「独学でデータサイエンスを学んだ」という。北野氏は大学時代からデータサイエンティストを志向。データサイエンティストに大切なのは「分析すべき事業ドメインへの興味」と語った。佐野氏は志望者に線形代数の学習を勧める。「非線形な事象を、どれだけ線形なもので近似して解くか」がデータサイエンスの基本だからだ。一方、原野氏は「求められるのはAIや機械学習を研究する人材だけではない」と発言。「興味があれば、恐れず飛び込んでは」と訴えた。最後に佐伯氏が、いずれの産業でもデータサイエンスが今後不可欠になると指摘。「産業構造が変わるなか、データサイエンティストを志す学生にとっては、まさに武者震いするしかない状態」と締めくくった。

データ・AI活用が変革の源に

講演では最初に日立システムズの板井光輝氏が登壇し、データサイエンティストを志す学生に向けてメッセージを送った。板井氏はまず「数学に基づくデータ分析や技術活用によって業務を解決する職業」とデータサイエンティストを定義。求められる第一の能力は数学・統計学の網羅的な知識と、その実装能力だとした。さらに、これを土台に「ドメインナレッジを体系的に習得し、さらに課題解決の経験を積んで、はじめて一人前のデータサイエンティストとして認められる」と語った。また、データサイエンスの典型的な業務のフェイズを①分析課題設定②データ分析③AIシステム開発④AIシステム運用保守とし、それぞれの業務内容や、必要なスキルを挙げた。

最後にフリーウィルのToshi Asaba氏と同社のMET CIFTCI氏が、同社の理念について語り合った。Asaba氏は15歳で渡米し、19歳の時、バックパッカーとして世界40カ国を回った経験の持ち主。世界の貧困や教育の現状を目の当たりにし、問題と向きあったことが、起業につながったという。一方、CIFTCI氏は母国トルコで日本語を研究し、来日後、Asaba氏と出会い、その思想に共鳴し同社に入ったという。対談では、ブロックチェーンを使った同社のクラウドファンディング「SPIN」を取り上げ、それがいかに世界の問題の解決に寄与できるかが語られた。

今回のスチューデントアカデミーには9つの「Data Society Fes 2020パートナー」をはじめ、32の大学が告知に協力した。イベントでは、データサイエンティストの業務内容、必要とされるスキルや適性、資質などが具体的に示された。また、データサイエンティストが今後、社会課題をどのように解決し、世の中にイノベーションをもたらすかといった展望も語られた。オンラインによって視聴した多くの学生たちにとって、盛りだくさんな内容はデータサイエンティストを志す上で、大いに参考になったに違いない。 

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