新規事業の成否 カギ握るIT人材の活躍

デジタル技術や様々なデータを活用して従来にないビジネスモデルを展開していくには、新たな事業戦略に沿った組織改革や社内への浸透をスピーディーに進めることが求められる。それには、組織の中にITやデータ活用などに感度の高いリーダー人材を適切に配置し、活躍してもらう必要がある。DX事業展開の成否を左右するIT人材の育成は急務だ。 本コラムは2020年12月15日日本経済新聞朝刊掲載 広告企画「DXの地平」を採録したものです。

目次

進むデジタルシフト

企業にとって、業務のデジタルシフトは最優先の経営課題。昨今はコロナ禍を背景に、テレワークの導入や非接触による感染予防という新たな目的も浮上している。中でもスマートフォンやタブレットなどモバイル端末での多業務対応化、RPA(業務自動化)の活用、あらゆるデバイスをネットワーク化するIoTなどが一気に普及してきた。

もともと「働き方改革」を先取りして在宅勤務を定例化していた企業や、国内での感染拡大を予想して素早くテレワークに移行した企業は多い。その一方で急にテレワークを採用した企業の中には見切り発車のケースも多く、今後運用しながら仕組みの見直しを図っていく企業は少なくない。仕事環境整備への機運はかつてなく高まっている。

早くから在宅勤務をはじめテレワークの仕組みを構築した企業では、まず業務フローをデジタルに対応した仕組みに転換している。決裁も印鑑からワークフローソフトや電子申請・決裁に転換するなどペーパーレス化が進行。ウェブ会議やチャットボットも多くの業務で浸透している。業務環境のベースが変わり空間・時間的な制約が変化していくことで多様な人材が活躍できるようになり、営業活動や管理業務などにとどまらず生産や研究・開発、市場分析など、さまざまな業務に波及効果が生まれつつある。

組織内にITリーダーを

先進的な取り組みを成果に結実するには、組織内の優秀なIT人材が不可欠だ。情報システム部門がある企業は多いが、中には情報システムの企画から構築、運用まですべてベンダーに依存しているケースもある。社会の動きや最新のデジタル技術動向を機敏につかんでスピーディーなデジタル改革を進めるには、社内に的確にIT人材を配置するとともに、経営層や社内各部署との連携を強化しておく必要がある。

情報処理推進機構(IPA)がまとめた「IT人材白書2020」で企業に対するアンケート調査のここ数年の動向を見ると、「量」「質」の両面でIT人材に対する不足感が高い実態が浮き彫りとなっている(グラフ参照)。

社内IT担当が外部のベンダーに大きく依存しているケースでは、システムの中身を決める要件定義の段階から煮詰めることができず、結果的にシステムの不具合や工期遅延で開発費が膨らむといった事態がしばしば起きている。外部ベンダーの技術力が低いわけではなく、ユーザー側の「何をしたいか」「何を目指すのか」が不明確な場合が多い。社内の業務に精通したプロジェクトリーダーが主導権を握っていれば、こうした失敗は避けられる。

また、ゼロから開発した旧基幹システムに代えて新たに統合基幹業務システム(ERP)を採用したり、業務によってはパッケージソフトを活用したりする場合では、極力カスタマイズを排除して開発コストを抑制する必要がある。こうしたケースでもIT人材がリーダーとなって、経営層や各部門と協力して進めることが、デジタル改革成功のカギになる。単なるプログラマーではなく、組織内のIT戦略を立案し実行し、さらに組織内に浸透させる能力が求められるわけだ。

内製化で継続的に改革

近年、AIによるデータ活用から多くの画期的な新事業・サービスが生まれており、AIに何をさせるか企画・設計する人材への需要は高い。

クラウドでAI活用人材育成ツールを提供するアイデミー(東京都千代田区)の石川聡彦社長は「デジタル改革推進の要は、システムの内製化を進めること」と言い切る。社内でIT感度の高い人材を育成し、トライ&エラーを繰り返していくことで「スピード感を持った改善が可能になる」というわけだ。IT人材を適所に配置し、プロジェクトリーダーにすることで組織横断的改革が円滑に進む。

改革を阻む壁は、新しいデジタル技術を活用するほど高くなる。AI活用で新事業に挑戦する過程で実証実験は成功しているのに、いざ実装する段階で社内の抵抗が大きくなることはよくある。しかし強力なITリーダーが主導していれば、新しい業務フローは浸透しやすいという。

石川社長は「一部の内製化でもいい。まず踏み出すことができれば、自ずとデジタル改革のPDCAサイクルが回り始める。AI活用をはじめとする社内DXを継続的に行えるようになる」と強調する。

DXを成功させ、さらに進化し続けるには、組織内IT人材の重要性を認識して長期的視点で育成を考える必要がある。経験を積んだIT人材が中心になってノウハウを組織内外に拡大していけば、新たな発想から生まれる新事業の技術的な課題をクリアすることも容易になっていく。

DXはこれからの企業の競争力の源泉。未来と今を結ぶ人材の力が、組織の新たな地平を切り開いていくだろう。

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