新価値創造へ 組織・システム刷新

目次

ビジネス・暮らし 一変

簡便な基地局で廉価な通信

仮想化ネットワーク

次世代通信規格「5G」を利用した携帯電話サービスが本格的に始まった。各社は料金引き下げに動くなどサービス競争でしのぎを削る。携帯電話の料金引き下げを求める政府の方針にも対応を迫られるなか、低コストで構築できる高速大容量通信技術が脚光を浴びている。

低コストの通信サービスを実現するカギを握るのが、通信ネットワークに価格の安い汎用機器とクラウドを使った「仮想化」と呼ぶイノベーションだ。この技術を全面的に採用した大手通信キャリアは、競合他社に比べて設備投資を4割、運用コストを3割削減できるという。

これまでの携帯ネットワークは特定の専用ハードウエアに依存していた。一方、仮想化技術は、ハードウエアの機能をソフトウェアで実現。ネットワークを汎用ハードウエアで構成し、大幅なコスト削減を実現する。

完全仮想化技術を使うと基地局の構成も簡単にできる。屋外基地局アンテナ設置には、複数の設備が必要だったが、仮想化技術を利用すれば基地局の構成を簡便にし、建設・運用コストなどを大幅に削減できる。

ネットワークを仮想化することで、ソフトウエアの更新だけで現行の通信規格「4G」から5Gに迅速に移行できるという。大容量で高精細な動画を配信する際、準備に約2カ月かかっていたが、仮想化技術を使うと数分でライブ映像を機動的に配信可能になるなど、未来の情報化社会実現に大きく一歩近づく。

エネルギー、インフラに革命

超スマート社会

政府が「第五期科学技術基本計画」で打ち出したサイバー技術と現実社会を高度に融合した「ソサエティー5.0(超スマート社会)」。インフラ系企業でIoT、AIなどを使った高度でスピード感ある「新しい作業様式」が生まれている。

設備工事大手のダイダンは、各種センサーなどの制御機器を無線化してクラウド上でデータを把握、遠隔地から監視や作業ができるビル監視制御システム「REMOVIS」を開発した。設備の最適運用や効率よい維持管理ができるほか、エンジニアが現地へ出かける頻度を減らせる。中央監視盤の更新が不要になり、同社の試算(60年間で算出)によると延べ床面積2万平方メートルのビルで設備維持管理コストを約10%低減できるという。

東京ガスはAIを活用して効率的に予測モデルを構築する「DataRobot」を導入。データサイエンティストが数カ月がかりで構築してきた予測モデルと同等の精度の予測モデルを短期間で構築するとともに、電力市場価格予測や各種設備の故障予知などオペレーションの最適化に取り組む。

実店舗とネットの長所融合

オムニチャネル

店舗とネットを融合したオムニチャネル。電子商取引(EC)に注力するアパレル業界を中心に注目を集めるが、新型コロナウイルスの感染拡大で普及に一段と拍車がかかっている。

「仕事でも遊びにも使える眼鏡を探しています」「それでしたら〇〇〇がお薦めです」。対話アプリ「LINE」のチャット機能で自宅にいながら店にいる感覚で眼鏡が選べるサービスを展開するのは、国内最大級の眼鏡ECサイトを展開するオーマイグラス(東京・港)だ。ネット上に約1万種類ある商品から眼鏡5本を選択。5日間試着し、気に入ればレンズを選択。フレームに装着できる。

眼鏡を作る際、通常は店で検眼し調整するが、同社のシステムは医療機関で検眼したデータや過去に作った眼鏡の度数を提示すれば済む。オムニチャネルを進めるうえでネックだったリアルな検眼をクリアした。

清川忠康社長は「眼鏡産業は最もDXが遅れていた」と指摘。「実店舗とネットの長所を融合させて眼鏡の購入をより便利にしていく」と話す。店頭の在庫は限られるが、ネット上の在庫は無限。顧客の選択肢も格段に広がる。新型コロナ禍で店を訪れる人が減るなか、「ECの売上高は倍増している」(清川社長)。

同社が扱う眼鏡は職人が製作したニッチで高単価なブランドが多い。売り場のスペースが限られる一般の店に並べるには知名度が低く、仕入れてもらえないことも多いが、「ECを活用すればニッチな需要を確実に拾える」(同)。今後は眼鏡だけでなく、伝統工芸品なども扱う計画。オムニチャネルが秘める可能性が一段と広がりそうだ。

※ 経済産業省と東京証券取引所が8月に発表した「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」などの取り組み実例から抽出

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